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米国湿地保護回復政策見聞録 その2・フロリダ州の湿地回復事業

 フロリダ州と湿地の結びつきについて疑問に感じられる方もいらっしゃるかも知れませんが、フロリダはメキシコ湾海流によって徐々にできあがった巨大な砂州のような土地で、非常に若いという特徴をもっています。ディズニーランドやユニバーサルスタジオがあることで有名なオーランド付近の地図をお持ちでしたら是非みて頂きたいのですが、たくさんの湖がフロリダの中心部にはあります。実際に、空の上からオーランド付近を見てみると穴だらけという感じです。さらに、高い土地がないということも大きな特徴です。土地の高低差がないので、水は流れず、大地に溜まり、湿地が数多くできている訳です。そして、フロリダの南部には余りにも有名な世界遺産エバーグレイズがあります。エバーグレイズは、ヘミングウェイで有名なキーウェスト近くのフロリダの南端部分一体にある大湿地帯です。エバーグレイズは水田のように浅水域が広大に存在し、そこにソウグラス(saw glass)という栄養分の少ないところにだけ生息できる植物が生えているという特徴をもっています。エバーグレイズとはインディアンの言葉で緑の川を意味するそうですが、この言葉はよくこの湿地の特徴を言い表していると思います。

 フロリダは、湿地が多く、蚊もたくさんいて開発が進んでいなかったのですが、フラグラーという大富豪がフロリダ鉄道を敷いてから、キューバとの交易が盛んになり、飛躍的発展を遂げ、開発も一気に進むことになりました。湿地には大きな運河(カナル)が開かれ、湿地の水が東西の海岸に大量に流され、フロリダの大地の保水力は一気に失われて行きました。また、湿地から水が取り除かれた後には、サトウキビ、シトラス(柑橘類)、牧畜がなされ、フロリダの原生的自然は失われ、肥料などで水は富栄養化し、本来ソウグラスしか生えなかったところに、キャットテイル(cat tail)などの大きな背の高い植物が生えるようになってしまったのです。さらに、オーランドやマイアミ、ウエストパームビーチなどに代表される高級リゾート開発により、人口が飛躍的に伸びて深刻な水不足を招くことになりました。ところが、先に説明したように、フロリダには高い山がありません。また、湖があっても水深が余りないためここに水をためることもできません。そこで、雨水を地下水として貯める事業も行われてきましたが、抜本的な対策として湿地を元に戻して、水資源を確保しようと言う事業が開始され、それをフロリダ州の南フロリダ州水資源公社が担当しているのです。
 湿地を回復する方法として実際に取られているのは、大きな運河を埋め立てて、水をあふれさせ、あふれ出た水の力で元の河川域を作り出すという方法です。また、ダムや堰を破壊し、昔通りの水の流れを取り戻し、湿地を広げるという方法です。

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 我々は、南フロリダ州水資源公社の方々の案内で、運河を埋立、湿地を大規模に回復している現場を視察することができました。小型のモーターボートで回復された湿地を見て回りました。
 ところで、湿地を広げると言うことは、それまで乾燥をさせて人が利用してきた土地を人が使えないようにするということですから、その土地を買収する必要があるのです。アメリカの特徴は、この土地買収にあるといってもいいでしょう。アメリカでは、自然保護や湿地回復に必要な土地は国や州がこれを買い取ります。税金を投入して買い取って公園や湿地となったところは、広く市民に開放して、レジャーやエコツアーで楽しんでもらって、税金を支払った市民に還元していこうという政策をとっています。だから、湿地回復に必要な土地は買収されていって居るのです。南フロリダでは、巨大な公共事業で、湿地回復をしています。

 日本では、湿地を破壊し、ダムや農地、ゴミ処理場を作るという方向で巨額の金が使われ、公共事業が行われることがあっても、巨額の予算を投資して湿地を回復するという事業が公共事業として行われたことはありません。釧路湿原では、旧河川部に水を引いて湿地を回復するという事業が行われつつあるようですが、このような取り組みが広く行われて行くべきでしょう。そのためには、湿地のもつ重要な機能、意義について十分な教育や啓蒙活動が行われて行き、税金を支払う市民の理解や意識が向上して行かなければなりません。
 今年、沖縄の泡瀬干潟を訪れる機会を得ましたが、きれいな湿地を歩くだけで、いろいろな生物に出会えて、興味は尽きませんでした。湿地は、子ども達が自然に触れあうことが簡単にできる身近な教室です。チェサビーク財団などで行っている湿地を利用した環境教育などについても、後に触れようと思います。

 フロリダでは湿地だけでなく環境にとって重要な土地を州が買い取っていくという予算が数億ドルレベルのプログラムが実施されています。次回はこのプログラムとちょっと話はずれるかもしれませんが、フロリダ州の全米一進んだ情報公開についてご紹介をしたいと思います。

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