リゾートの問題を考える人権大会のシンポジウムを準備するにあたって、我々は海外を視察して、議論を深めることにしました。その候補地として選んだ場所は、南ドイツのバイエルン州と、南フランスのラングドック・ルシオン州の2カ所です。


南ドイツのバイエルン州は、ファームステイ発祥の地と言われるところです。日本でも近年グリーンツーリズムの名の下に、農水省が中心となってファームステイの推進が進められています。ファームステイといっても馴染みのない方や、想像ができない方もいると思いますが、酪農などをしている農家の2階等にツーリストが宿泊し、農村での滞在を楽しむというものです。
我々はミュンヘン市内での官庁調査を終えた後、ミュンヘンからバスで約1時間のパイティングという町に向かいました。ここは中世城壁都市として有名なローテンブルクからノイシュバンシュタイン城に続くロマンティック街道にある小さな街です。我々はレストランで食事をした後、3カ所のファームと、1カ所のペンションに宿泊しました。ファームインは、それぞれの農家の接客スタイルがあり、基本的には干渉しないタイプのようですが、中には親密なコミュニケーションをとってくれる農家もあります。ツーリストは、何か体験型のアトラクションを準備しているところより、農村でのんびりするというタイプが好まれているようです。自転車でファームインを泊まり歩くというのも人気のようです。都会の人が癒しの場を農村に求めて、田舎にでかけるという感じでしょうか。
日本では、つい民宿を思い浮かべますが、ファームインは、基本的にはオーナーが農業や酪農の事業を行い、ファームインはその副収入として意味をもっています。ファームインの経営により、農村は直接現金収入を得ることができます。南ドイツは風光明媚な景観が多いが、逆に、肥沃な土地が少ないという特徴をふまえ、観光を利用して、農業・酪農をベースとするすばらしい牧歌的な景観を維持するというシステムを構築しています。
南ドイツには、農村地帯に日本のような巨大リゾートはありません。巨大リゾートは、環境に負荷をかけるだけではなく、結局、地元の住民が直接的な利益を受けることにはならないからです。農家が事業者として、所有する土地や施設を利用して自営していくというスタイルが重要と考えられています。
中央資本の巨大リゾート進出という身の丈に合わない計画を立てず、自分たちが主体的に事業者として考えていくという姿勢がとても印象的でした。
我々はファームインで宿泊した後、酪農を営む一家を訪ねました。その一家は夫婦二人と小さい子ども2人の家族でした。奥様は、酪農のハウスマネージメントのマイスターの資格を持っており、彼女の作った手作りパンはとても人気だそうです。




2日間の視察を終え、我々は、ミュンヘンを後にし、フランスのパリで観光省などを訪ねた後、南フランスのラングドック・ルシオン州に向かいました。
ラングドック・ルシオンという名前は馴染みのない方も多いでしょうが、(年5週間のバカンス休暇と週35時間労働の国)フランスで、近年開発された大型リゾート地があるところです。ニースその他で有名なプロバンス地方の西に位置しており、州都はモンペリエです。
この地方は、地中海と陸地の間に内海ができ、大規模な湿地を形成しています。この土地は最初利用価値のない土地とされていたようですが、フランス政府はグランドモットなどで、大規模な大衆向けリゾート施設を作りました。ピラミッド型のモダンな建物が海岸線に林立しているグランドモットは壮観でした。
我々は当初湿地を埋め立てて作られたという情報しかなかったので、自然は残されていないのではないかという先入観を持ちましたが、リゾートの建物があるところ以外の湿地は保全され、すばらしい景観を保っていたのには驚きました。このような景観が残ったのには、実は、海岸法の成立が大きく影響しているようです。我々は、モンペリエで、海岸法の権威、アンリ・クロンビエ弁護士と面談することができ大きなヒントを得ました。リゾート地の多くは海岸線にあります。海岸線の無秩序な開発を許すと、人々が憩う海岸線の美しさが損なわれ、景観が破壊されるということから、海岸線から数百メートル以内には建物を建てさせないという規制をひいたのです。
フランスは、ドイツのように、厳格なまでに自然を保護するという意識は感じられませんでしたが、それでも海岸法は成立し、今も生きています。
フランスには、環境の意識が極めて高い北欧から多くのツーリストがやってきます。そのツーリストの環境意識に合致しないリゾート地は生き延びられないという事情もあるようです。
ドイツでもフランスでも、エコロジーとエコノミーは両立するというのがトレンドのようです。
ラングドック・ルシオン州は初めてでしたが、濃い青い空とすがすがしい風には本当に癒されました。機会があれば、是非、プライベートでも再来したい場所です。