Contents

HOME

カレンダー

最近の記事

  • 福島県立大野病院事件・その2
  • 福島県立大野病院事件
  • 北海道大学内を見て回るなら・・・クラーク博士と新渡戸稲造像と化石
  • 法曹テニス〜最近の結果(杉山杯・廣岡杯共に準優勝・道弁連大会3位)
  • 交通事故賠償事件に関する当職事務所の方針〜その7〜弁護士費用(着手金・報酬)
  • 交通事故賠償事件に関する当職事務所の方針〜その6〜訴訟にするか示談するか
  • 民法(債権法)改正の動きを知っていますか。
  • 交通事故賠償事件に関する当職事務所の方針〜その5〜弁護士にコンサルトすべきケースとは
  • オリンピック〜女子マラソンを見て〜
  • 交通事故賠償事件に関する当職事務所の方針〜その4〜過失相殺の適用

月別の記事

  • 2008年8月
  • 2008年7月
  • 2008年6月
  • 2008年5月
  • 2008年4月
  • 2008年3月
  • 記事一覧

カテゴリー別の記事

Sammy'sダイアリートップ > 福島県立大野病院事件

2008/08/26 (Tue)

福島県立大野病院事件2008:08:26:06:17:18

PICT0156.JPG ● 
 新聞報道によると福島県立大野病院事件(福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性患者が死亡した事件・業務上過失致死罪)で、福島地裁が言い渡した無罪判決の理由の要旨は次の通りである。
●
 鑑定などによると、患者の死因は失血死で、被告の胎盤剥離(はくり)行為と死亡の間には因果関係が認められる。癒着胎盤を無理に剥(は)がすことが、大量出血を引き起こし、母胎死亡の原因となり得ることは、被告が所持していたものを含めた医学書に記載されており、剥離を継続すれば患者の生命に危機が及ぶおそれがあったことを予見する可能性はあった。胎盤剥離を中止して子宮摘出手術などに移行した場合に予想される出血量は、胎盤剥離を継続した場合と比較すれば相当少ないということは可能だから、結果回避可能性があったと理解するのが相当だ。
 本件では、癒着胎盤の剥離を中止し、子宮摘出手術などに移行した具体的な臨床症例は検察官、被告側のいずれからも提示されず、法廷で証言した各医師も言及していない。
 証言した医師のうち、C医師のみが検察官の主張と同趣旨の見解を述べている。だが、同医師は腫瘍(しゅよう)が専門で癒着胎盤の治療経験に乏しいこと、鑑定や証言は自分の直接の臨床経験に基づくものではなく、主として医学書などの文献に頼ったものであることからすれば、鑑定結果と証言内容を癒着胎盤に関する標準的な医療措置と理解することは相当でない。
 他方、D医師、E医師の産科の臨床経験の豊富さ、専門知識の確かさは、その経歴のみならず、証言内容からもくみとることができ、少なくとも癒着胎盤に関する標準的な医療措置に関する証言は医療現場の実際をそのまま表現していると認められる。
 そうすると、本件ではD、E両医師の証言などから「剥離を開始した後は、出血をしていても胎盤剥離を完了させ、子宮の収縮を期待するとともに止血操作を行い、それでもコントロールできない大量出血をする場合には子宮を摘出する」ということが、臨床上の標準的な医療措置と理解するのが相当だ。
●
 要約すると、胎盤剥離行為と死亡との因果関係は認められるが、一旦剥離を開始した場合には、それを中止せず、完了させるというのが医療標準だ。だから、過失がないと言うことらしい。
 報道によると、医師の産科離れが広がっているという。確かに、医療事故を起こしたということで逮捕・勾留されてしまうということになると、ハイリスク事案はやってられないという医師の気持ちも分からないではない。本件の場合を含めて、日本の刑事司法は身柄について極めて甘い体質を持っている。罪証隠滅のおそれを考えなくても良いような案件であっても、とにかく逮捕して、自白を求める。特に、ホワイトカラーと呼ばれる職種の人間は、逮捕拘留してプライドを崩すという狙いもあると思われる。
● 
 医療事故を防ぐにはどうしたら良いのかという問題もさることながら、逮捕・勾留までする必要があったのかという点も考えてみるべき事案だろう。

Copyright(c) 2006 Takahashi Satoru Law Office. All rights reserved.