2009/03/11 (Wed)
お奨めの一冊vol.5 堤寛著・「病院でもらう病気で死ぬな!」・角川書店(560円)2009:03:11:20:02:54
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2001年 の出版だからもうかなり古い本になるが、〜現役医師が問う、日本の病院の非常識度〜というサブタイトルが付けられている本がある。著者は、藤田保健衛生大学医学部教授だ。著者は病理学者という目線で、臨床の現場を分析している。
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第一章は歴史に残る恐ろしい話というタイトルが付けられているが、歴史ものとしても非常に面白い。消毒法の父、ゼンメルワイスは、1850年頃、産褥熱による死亡率を、手湯部の徹底的な洗浄と防腐処理を実践(現在でも承継されているブラッシングによる物理消毒と塩素水による化学消毒の併用)して、前年比で10分の1にまで減少させた。ところが、当時の産科学の権威者は、ゼンメルワイスの業績を無視した。ゼンメルワイスの業績を認めることは、すなわち、産褥熱が医師の手指による媒介される医原病である事実を認め、患者の命を救うべき医師自らの役割を自己否定することになるからにほかならなかった。実際、当時、医師らは診察前に手を洗っていなかった。
結局、ゼンメルワイスは、ウィーン大学を追われ、祖国ハンガリーのペシュト大学(現ゼンメルワイス大学)で産科教室を主催し、産褥熱による死亡者ゼロという成果を上げた。しかし、学会からは否定され続け、最後は、メスで傷ついた手指に端を発する創傷熱(これも医師が手洗いをしないのが主な原因)でゼンメルワイスは死亡した。
昨年、パリに行った際、保健省ではフランスでは手洗いをしないまま医療を行う医師が多いので、それを無くすキャンペーンをしていると語っていたことが思い出される。藤田教授は、日本の病院で広まるMRSA感染症も同じようなことが原因になっていると語っている。
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もう一つの悲劇は、日露戦争の際の、脚気について論争だ。脚気は急性ビタミンB1欠乏症であるが、東京慈恵会医科大学の祖である高木兼寛男爵(貧しい人を対象とした無料診療施設東京慈恵医院の開院、看護婦養成所、朝日生命の設立)は、海軍医務局長として(当時35歳)、良質の給食を提供することで、脚気患者の発生を極めて少数に抑えた。ところが、東京大学医学部出身の陸軍軍医局の医師たちは、一介の薩摩藩医である高木ごときに何が判るとばかりに、批判し、東大医学部出身でドイツ留学中の陸軍一等医の森林太郎(鴎外)を中心に、食事説を排斥、陸軍では米食至上主義が貫かれた。このため、日露戦争の旅順の戦い(203高地)で、乃木希典率いる陸軍第三軍は戦闘期間7ヶ月の間脚気に悩まされ続けた。
なお、皮肉なことに、ロシア側はビタミンC欠乏症壊血病に悩まされていた。ロシア軍は大量に保存してあった大豆からもやしを育てて食べることを知らなかった。不思議なことに、大豆にはビタミンCはないが、もやしにはたくさん含まれている。
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このような興味が尽きない話の先には、病気の原因を探り、それを探求する姿勢の重要性、メンツや権威にこだわらない科学者としての姿勢の大切さを説こうとする著者のねらいがある。
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第三章病院でもらう病気で死ぬなでは、病理学者としての鋭い視線が臨床医に注がれる。清潔でなければならない白衣のまま、食事や銀行にでかける医師、ナースキャップを何日も洗わずかぶりつつける看護師。腕時計をしたまま診察している医療者等々。日本の病院の問題点、医療従事者の意識の低さが浮き彫りにされる。
この本を一度読んでから、病院にでかけてみると、様々な問題点が見えてくるはずである。患者もこの本を読んで、受動的ではなく、能動的に医療に参加し、ミスを未然に防ぐ、感染症にかからないように自己防衛する必要があるかもしれない。
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インフルエンザが流行っていますが、基本は手洗いです。気をつけましょう。

