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2010/04/19 (Mon)

北海道大学法学部の思い出*ライフ

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 北海道大学法学部から、高校生向の広報誌の原稿「先輩からのメッセージ」を依頼されました。原稿は700字程度の短いものなのですが、書いていく内に、倍ぐらいの字数になってしまいました。
 折角なので、短くする前に、このブログに掲載したいと思います。

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 私は、札幌南高校を卒業して、昭和52年に北大に進学、法学部を昭和59年卒業し、その後4年を費やして、司法試験に合格して、弁護士になり、今札幌で弁護士をしている(弁護士法人高橋智法律事務所代表)。

 私が法学部に在籍したのは、当時は、景気が良く、法学部を卒業したら、大企業や公務員になるというのが当たり前の時代に、あえて合格率2%という最難関試験を受けることを選択する者は周囲から見ると「愚か者」であり、「異端児」だった。
 大学側も、司法試験の合格者が何人出ようと出まいと全く大学の価値には関係ないという姿勢であり、全くといって良いほど、無関心であった。そして、そのことを公言して憚らない教授の方もいた。今、法科大学院の生き残りをかけ、司法試験の合格率に一喜一憂している時代とは雲泥の差である。
 そんな時代にあって、異端児達は、現役時代そして卒業してからも法学部の自習室で勉強していたが、自然と当時法学部の1階にあった談話もできる大きな「給湯室」スペースに集うようになっていった。ここには最盛期30名前後の司法試験受験生が集っていた。そして、いつしか「給湯族」と呼ばれるようになっていた。「給湯族」はまさに周囲の学生から達から見れば「異端」であり、現役学生が使うべき自習室や給湯室を無断で使っている、疎ましい存在だったに違いない。

 しかし、北大からの司法試験合格者のほぼ全員が給湯族出身者であったのも事実であった。受験生2万人に対して500名しか合格しないという合格率2%の時代(現在は2000名合格で、合格率30%程度)にあってことを割り引いても、北大からの合格者は、他の国立大学からみて非常に少なく、毎年3名から6名程度だったが、もし、給湯族がいなかったら合格者ゼロという年が何年もあった。曲がりなりにも北大法学部に入学者しようとする高校生に、当時の法学部が司法試験挑戦の灯りを灯し続けて来られたのは、給湯族の存在があったからであった。

 給湯族は、ただ、お茶を飲み、食事をしていたのではない。択一試験、論文試験に備えて、皆で、様々な議論をしていた。互いに、その実力は判っている。だから、給湯族から合格者がでると強烈にうらやましいという気持ちが起きると同時に、あいつでも受かったのであるから自分が合格しないはずがないとか、次は自分の番だろうと考えることができた。だから、私もモチベーションを途切れさせずに最終合格を目指すことができた。
 みんな金がなく、いつも決まった服を着て給湯室に出入りしていたが、時間だけは自由に使えた、そして、司法試験合格という目標に向けてひたすら努力すれば良かった。ある意味贅沢な時代であった。そして、そこには、無謀と思われながら、一途に、鈍牛がごとく最終合格を泥臭く目指す姿があった。

 私が合格を果たした年、現役学生から、卒業生の自習室利用や給湯室の利用に抗議する声が上がった。疎まれていた給湯族は、法学部から排除された。当然ながら、その翌年から北大の司法試験合格者は激減した。

 今、時代は流れ、司法試験の門戸も大きく開放された。司法試験を目指すことは異端なことでも無謀なことでもなくなった。むしろ、北海道大学は地方の大学にあって司法試験合格率トップテンに入るような、司法試験に挑戦する学生をサポートしてくれる大学に変身し、私も、その非常勤講師として一翼を担っている。

 時代は変わったが、北海道大学法学部学生の司法試験受験スタイルは変わらないと思う。東京の緒大学のようなスマートさは全くないが、鈍牛がごとく、一歩ずつ、あちこちにぶつかりながらじっくりと実力を付けていくのは北海道大学のスタイルだし、北海道の風土に根ざした勉強スタイルだと思っている。
 そして、それこそが、北海道大学出身者の、本州のスマートな学生には絶対に獲得できない魅力だと思っている。

 給湯族出身の弁護士、裁判官、検察官は、どの分野でも、渋く輝いき、独特の存在感を示している。

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