コラム

2020.11.21

煙草をめぐるあれこれ

煙草の匂いがイヤなんです。

事務所は全面禁煙にさせていただいている。事務所開業当初は原則禁煙で、クライアントの皆さんに灰皿を用意しておいたこともあるが、すぐに、絶対禁煙になった。
理由は、煙草を喫んだ後の残り香がいつまでも消えないことにあった。煙草が苦手という人は煙草の煙独特の香りが嫌だという人が多い。煙草の煙の粒子は、衣服や髪に付着すると一日取れない。それがストレスとなるのである。
人間にはそれぞれ自分の臭いというものを持っているそうであるが、自分と異質の臭いが絶えず自分から漂っている状態はかなりストレスとなる。 このような悩みはいつも煙草の臭いが消えない愛煙家の方にはわからないのかもしれない。喫煙自由の職場で、ストレスに耐えながら毎日仕事をしなければならない苦しみを持っている人が多いことを愛煙家の方にぜひ知っていただきたい。
稚内から旭川まで喫煙車両にしか空席がなく、死ぬような思いで数時間列車に揺られたこと、サイパンまで行く飛行機が当時喫煙自由で、食事が終わった後、乗客が一斉に煙草を吸い始め、客室内が真っ白になったことなど、煙草を巡る強烈な思い出も多い。

吸うなとは言いにくい。

弁護士会の会議では、喫煙しながら会議が行われることもある。愛煙家が先輩の方だと、煙草をやめて欲しいとはなかなか言い出せない。それを言い出すことによって、人間関係が悪化することを恐れるからだ
おいしい蕎麦屋や寿司屋でも同じだ。おいしい蕎麦を食べようとしてるのに、隣から煙草の煙や臭いが来たのではたまったものではない。でも、やめて欲しいとはなかなか言い出せない。家族で美味しいレストランに入っても、煙草の香りが漂ってきただけで、がっくりしてしまう。蕎麦屋や寿司屋など、香りや味が極めて大切なお店で喫煙が自由なのは理解できない。贔屓にしているお寿司屋のカウンター席は全面禁煙だ。

煙草を巡る悩みは尽きない。

医療訴訟を手がけているので、ガンの発生の機序を勉強したことがある。ガン細胞は、増殖を繰り返す、成長する細胞である。このような細胞が突然変異で生まれる場所は絶えず細胞が新陳代謝を繰り返す場所であり、煙草を吸っている人の場合は、肺や器官である。煙草を喫すれば肺ガンになる確率が増えることは当然なのである。また、入院中の乳児が死亡した事例の際勉強したが、乳児突然死症候群と呼ばれる乳児の突然死は、母親が喫煙する場合に発症する確率が高いといわれている。
煙草を喫むこと自体は個人の自由であり尊重されねばならないのは当然だ。しかし、問題は煙草の影響を受けたくない人の権利といかに調整するかである。煙草の煙は時間と場所を越えて影響を及ぼすだけにその調整が難しい。煙草を巡る悩みは尽きそうにもない。