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2026.01.17

一月一言 NHK土曜ドラマ「男たちの旅路」から考える法律手続

  • 正面から語るということ

    NHKの土曜ドラマ 男たちの旅路 は、何度再放送を観ても心に残る作品です。
    鶴田浩二演じる主人公のもとに、水谷豊、森田健作、桃井かおり、柴俊夫ら若者たちが集い、警備会社のガードマンという仕事を通じて、本音と本音をぶつけ合っていきます。

    登場人物たちは決して器用ではありません。
    しかし、不器用だからこそ、逃げずに相手と向き合い、言葉を尽くそうとします。
    その姿は、今の時代だからこそ、強く胸に迫ってきます。

    「言わない」か「言い過ぎる」かの社会

    現代社会では、意見の対立そのものは珍しくありません。
    ただ、その多くは、相手を前にした対話ではなく、SNSなどの間接的な場で表明されます。

    画面の向こうでは強い言葉を使えても、本人を前にすると何も言えない。
    あるいは、感情が先に立ち、必要以上に激しい言葉になってしまう。
    その結果、「何も言わない」か「言い過ぎる」か、極端な選択になりがちです。

    「男たちの旅路」が描く世界は、その正反対にあります。

    逃げ場のない場所での対話

    ドラマの中では、同じ現場で働き、同じ時間を共有する中で、価値観の違いが必ず表に出ます。
    不満があれば口に出す。
    反論されれば、さらに言葉を探す。

    沈黙や陰口では、その場は通り過ぎられません。
    だからこそ、言葉には重みが生まれ、対話は簡単ではなくなります。
    この「正面から語り合う」姿勢こそが、この作品の本質だと感じています。

    裁判という対話の場

    私は弁護士として、裁判の場に日々立ち会っています。
    裁判もまた、「正面から語ること」を求められる場所です。

    裁判では、自分の考えを整理し、言葉として相手に示さなければなりません。
    同時に、相手の主張を正面から受け止め、その意味を理解する必要があります。
    これは決して簡単なことではありません。

    弁護士の役割は、依頼者の感情をそのままぶつけることではありません。
    お気持ちを丁寧に整理し、法的な「主張」として言葉にすること。
    そして、相手の主張を冷静に読み解き、どこで歩み寄り、どこで線を引くのかを一緒に考えることです。

    言葉の品格が問われる時代に

    近年、裁判書類の中にも、感情的で攻撃的な表現が目立つことがあります。
    まるでSNSの延長のような言葉遣いを見ると、強い違和感を覚えます。

    裁判は、叫び合う場ではありません。
    対立を整理し、社会としての答えを導くための制度です。
    そのためには、冷静さと、相手への敬意、そして言葉の品格が欠かせません。

    今も問いかけ続けるドラマ

    「男たちの旅路」は、決して古い時代の熱血ドラマではありません。
    正面から語ることの難しさと、その尊さを、今もなお私たちに問いかけ続けています。

    だからこそ、再放送のたびに、つい見入ってしまうのだと思います。
    ゴダイゴの ミッキー吉野 による音楽も、この作品の空気を静かに、深く支えています。