「法廷」のイメージと、ほんとうの調停
調停は“対決の場”ではない
調停は、非公開の部屋で行われます。
通常は、当事者が同じ部屋で顔を合わせることはありません。
申立人が調停委員に事情を説明し、その後、相手方が別室で話をする。
調停委員が双方の部屋を行き来しながら、意見を整理し、着地点を探っていく。
「相手の前で言いたいことを言わなければならないのですか」
この質問を、私は何度も受けてきました。
答えは明確です。そのような心配は不要です。
対面で言い争う場ではありません。
感情的な衝突を避けるためにこそ、調停という制度は設けられています。
よくある二つの不安
① 相手方が出頭しなければどうなるのか
実際には、まったく出頭しないという例はそれほど多くありません。
仮に出頭しなければ、それは「話し合いに応じる意思がない」という明確な態度表明になります。
その場合、申立人としては、ためらうことなく訴訟へ踏み切る判断ができます。
調停を経たという事実自体が、次の段階へ進むための整理になります。
② 不成立になったら意味がないのではないか
これも誤解です。
調停が不成立に終わったとしても、
相手方の具体的な主張や考え方を把握できることには大きな意味があります。
・どこが争点なのか
・どこに譲歩の余地があるのか
・本当に訴訟に進むべきか
・あるいは、別の解決策を模索すべきか
調停は、単なる「和解の場」ではなく、
自分の進むべき方向を見極めるためのプロセスでもあるのです。
調停をもっと重視して欲しい。
せっかく当事者が勇気を出して申し立てた調停。それに対して真摯に向き合っていただきたいと思いがあります。
調停で丁寧に説明を尽くせば、
訴訟に進まずに解決できるかもしれない。
あるいは、相手方が自らの立場を再考し、
無用な訴訟を断念するかもしれない。
訴訟は、時間も費用も、そして精神的な負担も大きい手続です。
それを回避できる可能性がある調停をもっと有効活用できないでしょうか。
「話し合い」という選択肢の重み
調停は、弱い手続ではありません。
むしろ、当事者の主体性を尊重する制度です。
裁判所が一方的に結論を下すのではなく、
当事者自身が納得のいく形を模索する。
その過程には、意味があります。
法廷のドラマチックなイメージとは異なり、
調停は静かな部屋で、淡々と、しかし真剣に進みます。
大声も、演説も、不要です。
必要なのは、自分の思いを整理し、言葉にすること。
そして、相手の主張を冷静に受け止めること。
調停は、対決の場ではなく、
未来を選ぶための場なのです。

